CROWS (RWS)

12.7mmM2重機関銃を搭載したM153 CROWS II

CROWS(Common Remotely Operated Weapon Station)は、アメリカ合衆国で調達、運用されているRWS(Remote Weapon Station, 遠隔操作式銃塔)の呼称である。最初に配備されたM101 CROWSと、その後改良型として配備されたM153 CROWS IIの2種類のモデルがあるが、両者は全く別のメーカーの製品をアメリカ軍がそれぞれ制式採用したものであって、M153 CROWS IIはM101 CROWSの直接の後継機種という訳では無い。

概要

CROWSはアメリカ軍による要求仕様に基づいて調達、配備されたRWSである。5.56mmM249軽機関銃7.62mmM240汎用機関銃、12.7mmM2重機関銃Mk19 40mmグレネードランチャーを装備可能で、周囲360°の旋回能力、上方60°下方20°の仰俯角を持ち、ジャイロスタビライザーにより安定化されている。照準用光学機器として可視光用ビデオカメラ、赤外線暗視カメラ(サーマルサイト)レーザーレンジファインダーが搭載されており、弾道計算用のFCS(火器管制装置)を持つ。

マックスプロの車内でM153 CROWS IIを操作する米軍兵士。2012年、アフガニスタン。

2004年にイラク駐留アメリカ軍に配備が始まったM101 CROWSは、Recon Optical Inc製のRWSであるRAVEN R-400をアメリカ軍が制式化した物で、特殊部隊、憲兵隊、歩兵部隊、輸送部隊などに配備された。M101 CROWS(RAVEN R-400)は約560基がアメリカ軍に配備されRAVEN R-400た[1]。2006年にはオーストラリア軍のブッシュマスターIMVへの搭載用に44基のR400S RWSをオーストラリアが購入し、アメリカ以外の初のユーザーとなった。後にオランダ陸軍がオーストラリアからブッシュマスターIMVを緊急購入した際、R400S RWSが装備された車両もオランダ軍に導入された[1]

2007年8月に調達契約が交わされたM153 CROWS IIは、ノルウェーコングスベルグ・ディフェンス&エアロスペース製のプロテクター RWSシリーズの機種であるM153 プロテクターをアメリカ軍が採用したもので、当初からM101 CROWSを大きく上回る約6,500基がアメリカ軍に導入された。2009年にはアメリカ軍の調達数が約10,000基強に増やされている[2]。M153 プロテクターの前身であるM151 プロテクターはアメリカ陸軍のストライカー装甲車の標準装備として配備されていたため、運用評価が進んでいたことや、保守部品の互換性などの優位性があったものと見られる。M153 CROWS IIはハンヴィーM1A2 SEP V2、各種MRAP(マックスプロ、RG-31M-ATV、バッファローMPCVなど)に幅広く搭載されている。

バリエーション

M101 CROWS
アメリカ合衆国のRecon Optical社によって開発されたRAVEN R-400をアメリカ軍が採用した物。重量約135kg(火器含まず)。
M153 CROWS II
ノルウェーのコングスベルグ・ディフェンス&エアロスペース社によって開発されたM153 プロテクターをアメリカ軍が採用した物。重量約172kg(火器含まず)[3]
CROWS-J
M153 CROWS IIにFGM-148 ジャベリン対戦車ミサイルを追加装備したバージョンで、2017年から18年にかけて第2騎兵連隊(英語版)のM1126ストライカーICVに配備されテストされた[4]
アメリカ陸軍は各ストライカー旅団のICVの半分を30mm機関砲搭載型のM1296ストライカーICVD(ドラグーン)に更新し、残りの半分にはCROWS-Jを装備する事により、各ストライカー旅団の火力強化を検討している[5][6][7][8]

運用国

アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国

M101 CROWS 約560基。M153 CROWS II 約10,000基を導入。後者はハンヴィーMRAPへの搭載の他、M1A2 SEP V2の標準装備となった。

オーストラリアの旗 オーストラリア

ブッシュマスターIMVにRAVEN R-400(M101 CROWS)を搭載。

オランダの旗 オランダ

オーストラリア軍からブッシュマスターIMVを直接緊急購入したため、R-400 RWS(M101 CROWS)もセットで導入された。

画像

  • RAVEN R-400のプロトタイプ。後にM101 CROWSとして採用された。
    RAVEN R-400のプロトタイプ。後にM101 CROWSとして採用された。
  • R-400(M101 CROWS)を搭載したブッシュマスターIMV。
    R-400(M101 CROWS)を搭載したブッシュマスターIMV。
  • M153 CROWS II(M153 プロテクター)。光学機器側面に防弾板が設置されている。
    M153 CROWS II(M153 プロテクター)。光学機器側面に防弾板が設置されている。
  • M153 CROWS IIを搭載したM-ATV。
    M153 CROWS IIを搭載したM-ATV
  • M153 CROWS IIを搭載したL-ATV (JLTV)。
    M153 CROWS IIを搭載したL-ATV (JLTV)。
  • M153 CROWS IIを搭載したハンヴィー。
    M153 CROWS IIを搭載したハンヴィー
  • M153 CROWS IIを搭載したRG-33。
    M153 CROWS IIを搭載したRG-33
  • M153 CROWS IIを搭載したマックスプロ。
    M153 CROWS IIを搭載したマックスプロ。
  • M153 CROWS IIを搭載したM1A2 SEP V2。
    M153 CROWS IIを搭載したM1A2 SEP V2
  • M153 CROWS IIにMk19 40mmグレネードランチャーを搭載するアメリカ陸軍兵士。
    M153 CROWS IIにMk19 40mmグレネードランチャーを搭載するアメリカ陸軍兵士。
  • CROWS-Jを搭載した第2騎兵連隊(英語版)のストライカー。
    CROWS-Jを搭載した第2騎兵連隊(英語版)ストライカー

脚注・出典

  1. ^ a b defense-update.com R-400 CROWS
  2. ^ kongsberg.com Increased scope of CROWS
  3. ^ M153 PROTECTOR
  4. ^ http://www.army-guide.com/eng/product5926.html
  5. ^ New Stryker armored with CROWS-J Javelin missile turret for US troops in Europe. Army Recognition. 4 September 2018.
  6. ^ Army wants a new remote operating system for its ground combat vehicle cannons. Army Times. 8 March 2019.
  7. ^ Army Details Plan to Equip Stryker Infantry Carriers with Tank-Killing Missiles. Military.com. 24 September 2019.
  8. ^ Battle group in Poland is the only Army unit to use 'upgunned' Strykers. Stars and Stripes. 11 June 2020.

関連項目

ウィキメディア・コモンズには、CROWS (RWS)に関連するカテゴリがあります。