順圧

連続体力学


法則
質量保存の法則
運動量保存の法則
エネルギー保存の法則
クラウジウス–デュエムの不等式
固体力学
固体 · 変形 · 弾性 · 弾性波 · 弾塑性 · 塑性 · フックの法則 · 応力 · ひずみ · 有限変形理論 · レオロジー · 粘弾性 · 超弾性
流体力学
流体 · 流体静力学
流体動力学 · 粘度 · ニュートン流体
非ニュートン流体
表面張力
科学者
ニュートン · ストークス · ナビエ · コーシー · フック · ベルヌーイ
順圧の流体の構造図。黒は等圧面、水色は等密度面。

流体力学において、流体順圧(じゅんあつ)である、あるいはバロトロピック: barotropic)であるとは、圧力密度のみに依存すること、すなわち、等圧面と等密度面が一致することをいう。

天体力学で、恒星内部の流体のモデルとして使われるポリトロピック流体(圧力が密度のべき乗で表せる流体)もバロトロピック流体のよく知られた例である。また、密度一定の流体(ρ=constant)もバロトロピック流体の一つである。

静水圧平衡と順圧

保存力のもとで圧縮性流体が静止状態になるためには、順圧性が必要条件である。

以下、流体にかかる外力と圧力勾配が釣り合う場合(静水圧平衡)を考える。力の釣り合いの式は

1 ρ p + f = 0 {\displaystyle -{1 \over \rho }\nabla p+{\boldsymbol {f}}=0}
p:圧力、ρ:密度、f :単位質量あたりの外力)

である。ここで、重力遠心力のように、外力が保存力の場合を考える(保存力のポテンシャルをΩとする)。

1 ρ p Ω = 0 {\displaystyle -{1 \over \rho }\nabla p-\nabla \Omega =0}

両辺の回転をとると rot grad Ω = 0 {\displaystyle \operatorname {rot} \operatorname {grad} \Omega =0} だから、

0 = × ( 1 ρ p ) = 1 ρ 2 ( ρ × p ) ρ p {\displaystyle {\begin{aligned}0=\nabla \times \left(-{1 \over \rho }\nabla p\right)={1 \over \rho ^{2}}\left(\nabla \rho \times \nabla p\right)\\\therefore \nabla \rho \parallel \nabla p\end{aligned}}}

となる。傾き∇ff の等値面に垂直だから、∇ρ と ∇p との平行性は ρp の等値面の一致、すなわち順圧性を意味する。

順圧性が成り立つなら、密度が圧力の関数(ρ=ρ(p))になるので、単位質量あたりの圧力勾配が

1 ρ p = d p ρ {\displaystyle -{1 \over \rho }\nabla p=-\nabla \int {\mathrm {d} p \over \rho }}

と表せる。この性質により、非粘性バロトロピック流体ではベルヌーイの定理ケルビンの渦定理が成立する。

参考文献

  • Tritton, D.J.,『トリトン流体力学<上>』 川村哲也訳 インデックス出版 2002年4月1日初版発行 ISBN 4901092251 (原書 ISBN 0198544936)
  • 今井功 『流体力学(前編)』裳華房、1973年11月25日発行、ISBN 4785323140
  • 木村竜治 『地球流体力学入門』東京堂出版、1983年4月10日発行、ISBN 4490200684

関連項目