シス–トランス異性体

シス–トランス異性体(シス–トランスいせいたい、: cistrans isomer) または幾何異性体(きかいせいたい、: geometrical isomer)は有機化合物錯体立体異性体の一種である。

「幾何異性体」という名称はIUPACでは推奨されていない[1]

シス–トランス異性体と呼ばれるものは次の3種類である。

  1. 有機化合物の二重結合への置換による異性
  2. 環状化合物の環への置換による異性
  3. 錯体配位子の位置の違いによる異性

二重結合

まず炭素の二重結合に2つずつの異なった基が結合する場合を例に取ると、主鎖(炭素数最多の鎖)となる炭素骨格が同じ側(同じ炭素ではない)につくとシス (cis) 型、反対側につくとトランス (trans) 型の幾何異性体となる。IUPACでは基の優先度(置換基の順位規則。カーン・インゴルド・プレローグ順位則)が定められており、その基準で置換基の配置がシス型のときZ、トランス型のときEとして表す。Zはドイツ語のzusammen(いっしょに)、Eはentgegen(逆に)(いずれも副詞)に由来する。

cis-trans

ただし、炭素‐窒素間あるいは窒素‐窒素間の2重結合による幾何異性の場合(オキシムなど)は、代わりにsyn, antiを使用する。

syn-anti

環状化合物

環状化合物で隣接する炭素がどちらも三級炭素の場合、環から飛び出す置換の向きが環平面に対して同じ側か異なるかでcis, transを使用する(E, Zは使用されない)。

単環 cis-trans

飽和縮合環化合物の場合も同様に、環平面に対して同じ側か異なるかでcis, transを使用する(E, Zは使用されない)。

縮合環 cis-trans

環の幾何異性の位置が2つ以上ある複雑な場合はcis, trans表記よりも、(R), (S) の絶対配置で表記するのが適当である。

錯体の幾何異性

詳細は「錯体#幾何異性体」を参照

脚注

  1. ^ IUPAC, Compendium of Chemical Terminology, 2nd ed. (the "Gold Book") (1997). オンライン版:  (2006-) "geometric isomerism".

関連項目

トピック
Scheme overview of spatially different isomers
配置記述子
cistrans異性

cis-, trans-

EZ表記法

(E)-, (Z)-

芳香族置換基パターン

o-, m-, p- (ortho, meta, para)

Endo-exo異性

endo, exo

シンおよびアンチ付加

syn, anti

3つの同一配位子

fac, mer (facies, meridonal) [廃止]

炭素骨格

n, iso, neo, cyclo

第二級と第三級

sec-, tert-

スピロ化合物

spiro

カテナン

catena

絶対配置
CIP(カーン・インゴルド・プレローグ)優先則

(R), (S)

擬不斉(擬キラル)中心

(r), (s)

旋光性

(+)-, (−)- または d-, l-

相対配置

D-, L-

Category:立体化学
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